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8年間
オレは待ち続けた
氷付けにされたヤツを見に行く度に
伸びた髪がその経過年月を訴えてきやがる
8年
もう8年だ
8年も
あの赤い瞳を見ていない
ヤツを一目見て、オレは惹かれた
当時のオレにはすでにあらゆるファミリーから声がかかっていた
へなちょこのキャバッローネからもな
だがそれらを全て蹴ってまでも
オレはアイツに従うと決めた
正直、それ以外考えられなかった
プライドなんざちっぽけなものだ
そんなモン捨てるほど
ヤツの赤い瞳に秘められた『怒り』に
オレは惚れた
「うぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぃっ………ボスさんよぉ」
氷の前に立ち、言葉をける
「てめぇ………いつまで眠ってんだ………」
あの『計画』が果たされるまで、オレは誓った
髪は切らねぇ、と
それはオレの覚悟の証
全てを捧げるという覚悟の
髪だけじゃねぇ
腕も
足も
心臓も
命さえも
オレは捧げる
何だって捧げる
だから
「目ぇ………覚ませよ………」
あの声で
オレの名を呼んでくれよ…
なぁ
ザンザス………
融けない氷に額を当てながら
1人、呟いた
町々に押し寄せ、破壊の限りをつくす魔物たち
ヒトでは無いそれらに町の者達は恐怖を抱き、そして魔物はその恐怖を糧に力をつける
一体どれだけの数の町が破壊されたのだろうか
一体どれだけの数の人が殺されたのだろうか
そんな時だった
ただ絶望しか残らないこの世界に
希望が現れたのは
「きゃぁぁぁぁぁっ!!!」
助けを求める声と共に、彼らは現れる
「待て!!」
顔を上げた魔物、そして助けを求める人々の目に映ったのは、6つの影
「これ以上、町を壊させやしない!!」
「あ、あなた方は……」
「名乗るほどの者じゃないさ。レッド、人々の救出はオレに任せろ」
「あぁ、頼んだぜオレンジ!」
「!?レッド、前を見て!!」
スキをついての魔物の攻撃
鋭い爪が襲い掛かる
だが
「おやおや、スキをつくとは関心しませんねぇ」
「そんな魔物、このアタシがやっつけるんだから!行くよ、グリーン!」
「えぇ、もちろんですわ!!」
頼もしい仲間達の力で邪悪な魔物たちをなぎ払う
愛
勇気
希望
そして仲間
みんながいれば恐れるものなんて何も無い
「一体…アナタ方は………」
「オレ達?そう、オレ達は…」
そう、彼らの名は
「「「「「「アビスマンだ!!!」」」」」」
「……………ってな脚本で映画作りたいと思ってんだけど、アッシュもやらね?」
「いきなり呼び出して何ふざけたことぬかしやがる屑がっ!!!」
某日
ボンゴレ日本支部ーー
「うお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぃっ!!!!!」
突然届けられたDVDをデッキに入れた直後、山本の部屋中には多大なる大声が響いた
部屋中で収まるわけがない
それを聞いた者達が押し寄せるだろうことはわかっていた
「うるせぇんだよ山本!!」
「…群れてるのかい?」
「極限だぁぁぁっ!!!」
「………うるさい…」
集まった仲間達、5年前にリングのために共に死闘を繰り広げた仲間達は駆け寄る
心配した、文句を言いに来たなどそれぞれ理由はあるだろう
だが、彼ら彼女らは確かに来てくれた
それを嬉しく感じながら山本はいつもの笑顔で何でもないと一言言う
そして皆に心配かけたことを詫び、再び自室へと入った
座り、急いでデッキから出したDVDを手に持つ
近くにはそれが入っていた箱もある
いつ届いたのかは定かではない
早朝は剣の腕を磨くために修行をし、それが終わると野球の練習に出かけたのだ
そして昼過ぎに帰ってきて、今に至る
送り主がよく知っている相手だから安心して開けたのだが、逆に知っているからこそ警戒すべきだったと少しばかり後悔する
だが、後悔するよりも中身が気になる
今度は先にテレビのボリュームを下げてから、DVDを差し込んだ
「うお゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぉ゛ぃっ!!!!!生きてるだろなぁ、山本武ぃっ!!!」
再び画面からは叫び声、これが彼の普段の声であることはわかっている、が聞こえてくる
ボリュームは下げているはずなのに、それでも耳に響く
とりあえずボリュームはこのままにしておこう
山本は相手を待つ
「てめぇ…ちゃんと剣の腕は磨いているだろなぁ?してなかったら叩き切るぞぉっ!!」
それは何年か前にも言われたことだ
相変わらず変わらねぇのな~と思いながら、毎日欠かさず行っている修行の様子を頭に描く
時雨蒼燕流の9代目継承者とは言え、8代目である父親には全力を尽くさなければ敵わない
実家の職業の関係上、修行に付き合ってもらえるのは月に2度3度
それでもリング戦直後にのみ手合わせをした彼よりは多いものだ
「いいかぁ…よく聞けぇ」
意識をそちらに向ける
DVDとはいえ、彼と目が合った
「先の剣帝、テュールのことは知ってるな?」
リング戦後の手合わせ時に本人から聞いたことがあった
彼は組織に所属する際、当時の組織のボスを倒したのだ
それがテュール、当時、剣の帝王と呼ばれていた男らしい
その功績を認められ、組織に入り、そして後に忠誠を誓うことになる相手に出会ったのだ
「ヤツはいねぇ、つまり今、剣帝の座は空いている」
「だからっ、オレが剣帝になることに決めたぁっ!!!」
思わず目が点になる
だがそれは自らを剣帝と呼ぶからではない
彼の強さは誰よりも山本がよくわかっている
今思えば、当時の自分が勝てたのが不思議なくらいだ
多少であるとは言え剣技の世界に入った今だからこそわかる
当時の自分はまだまだ未熟で、生半可すぎる腕で戦いに赴き勝利を得たことはもはや奇跡に等しい
だが、彼は違う
彼は山本が剣技の世界に入るより10年以上前にその世界に入っていた
驕りでも謙遜でも無い
彼の強さは本物だ
剣帝と呼ばれるに相応しい力を持っている
「山本武っ!!」
ふととあることを考えた瞬間だった
テレビの中から名を呼ばれたのは
まるでタイミングを計ったかのような声に驚きを含めて顔を上げる
「てめぇも来い!!」
「!?」
「てめぇはオレが唯一認めた、オレと高みを目指せる存在だ。」
「筋はイイ…才能も、それを伸ばす精神もある。」
「なら、その才能を、力を無駄にするな」
言われ続けられていた
1度や2度じゃない
何度も、何度も
それこそ彼だけでは無かった
才能がある
父親の知り合いの使い手達
流派を同じくする者達
仕事として戦った剣士達
皆が言ってきていた
何故
剣を極めようとしないのか?
ソレダケノサイノウガアリナガラ
ナゼ
タカミヲメザサナイノカ
山本は唇を噛む
護るべき仲間達と共にこの世界に入った
だが後悔があったかと聞かれれば無いと即答はできない
小さい頃よりの夢
野球を続け、大リーガーになるのが夢だった
極めたかったのは野球だった
だが
剣も極めたい
そうも思っていた
わかってはいた
両方は選べない
本気で極みを目指すならば片方を選ばなければならない
顔を伏せ
黙り込む
今の山本には
選べなかった
両方とも、『ごっこ』ではないのだ
どちらかを選ぶなら
どちらかを捨てなければならない
その覚悟は
ナイ
「………まぁ、今のてめぇに…んなこと言っても意味はねぇだろなぁ」
「野球と剣と悩んでんだろ?」
知られていた…
思わず口を開く
「だがそれは悪くねぇ。悩むことの何が悪い?」
「大事なものがあるのは当然だ。それがあるから、人は戦える」
「悩むなら悩めっ!!大いに悩め!!」
「その結果てめぇが野球を選んだとしてもオレは文句は言わねぇ。まぁ、オレとしては剣技の世界に来て欲しいがな。」
「だから!!」
「剣技を選べるよう、てめぇにオレの誇りを送りつける!!!」
彼は言った
自らを鍛えるため、そして剣帝を名乗るため
100本勝負を行う、と
世界の100人の剣士と戦い続け、それをもって剣帝を名乗る
その戦いの様子は全て山本に送りつける、と
「早速今週末、オレは劉雲というヤツと戦ってくる!!中国で名のある剣士だ!!」
「オレの戦いをよく見やがれっ!!!」
そして映像は終わった
自動的にDVDが取り出される
「ははっ………相変わらず…………変わってないのな…」
軽く溜め息を吐く
だが、その顔は晴れていた
変わらないライバルに
何かを与えられた
「っし、頑張るか!!」
山本は立ち上がる
悩もう
そして決めよう
バットか刀
どちらを手にするか
「サンキュな、スクアーロ」
剣を選んだ時は最大のライバルになるだろう相手に敬意を込め
山本はその言葉を口にした
あれから7年が経った
沖田総悟と書かれている直方体の石の前にたたずむ女性。腰まで届く長さのオレンジ色の髪は風が吹く度にたなびいている。
7年、そう、7年が経った。共に生きると決めたあの日から7年。先日、沖田は結核により還らぬ人となった。
「いつまでもんなとこにいちゃ、風邪引くぜ。」
佇む女性に彼は声をかける。だが女性は動こうとはしなかった。それに気づき、ため息をつきながら肩を落とす。ぽりぽりと頭をかき、彼、銀時は空を見上げた。
あの日から数日後だった。突然真選組に来訪者が現れた。隊の者が止めるのも聞かず、その者はずかずかと隊舎を歩いて行く。そして、たどり着いたのは沖田の部屋だった。
ガラっと襖を開けると中にいた沖田を確認する。一体何者かわからないその者を相手に沖田はすぐに刀を手に取りそして構えた。少しずつ体力が落ちているとはいえ、沖田は真選組イチの刀の使い手。その事実は未だ健在である。相手もまた、沖田に対して武器を構える。その武器にデジャブを感じながらも、沖田は1歩踏み出そうとする。
「パピー?」
だがその1歩は、廊下から聞こえてきた声で出すまでにはいかなかった。知った声に呼ばれたその者は、殺気を消し、武器を下ろす。
「神楽、久しぶりだな」
「やっぱりパピーね!!」
神楽はその者へと近づき、そして
「今までどこ行ってやがったクソ親父!!!!!」
豪快にその者を蹴飛ばしてしまった。さすがの沖田も、その展開にはついていけなかった。
「いやぁすまない。とんだ無礼を見せてしまったな」
「いえ……」
被っていたフードを取り、しこたま殴られ蹴られの顔でその者は座った。頭は……頭に関しては何もつっこまなかった。毛がただ1本だけ残っている、否、1本しか残っていない。
山崎が煎れてくれた茶を飲みながら対面する。その者の名は星海坊主、神楽の実父だった。使っている武器が傘という時点で神楽の縁者だとは予想はついたが…
「で?いきなり何しに来たね?」
沖田の隣に座る神楽は多少不機嫌のようだ。この父娘に何があったのかは沖田は知らないが、神楽がここまで不機嫌になるとは余程のことがあったのだろう。娘の怒りを感じたのか、「小さい頃はあんなにぱぴぃぱぴぃと素直だったのにぃ…」と泣き出してしまった。おっさんに泣かれても何も楽しくも無い。だが神楽の父親だ、無碍にするわけにもいかず沖田は声をかける。
「星海坊主…さんはいろんな星を回ってるんでしたねェ。なのに何でこの星に来てるんですかぃ?」
娘に会いに来た、ということだったら別に理解は出来る。それならばそうと言えばいいのだ。だが、泣き止んだ星海坊主は顔を上げ、そして小瓶を机の上へと置いた。
「…これは?」
「薬だ。」
薬。その言葉に2人とも反応する。
「数日前、とある者に依頼を受けた。報酬はいくらでも払うと言われたその依頼の内容とは…」
結核を治す薬を探し出して欲しい、ということ
沖田は目を見開いた
星海坊主は続けた。
この地球には結核を直す薬は存在しない。解明する医学技術が無いからだ。だが他の星では?地球よりも医学の発達している星など山のようにある。その星ならば薬が手に入る。だが依頼主は地球の人間、そう簡単に他の星に行くなどできない。だから星海坊主に依頼したのだ。星々を行き来する星海坊主ならばそんな星のたどり着く可能性があるから。
だが、と彼は言葉を濁す。
「この薬では、完全に治すことはできない。」
初期の結核ならば完治も可能だっただろう。だが沖田の病状は吐血するほどまでに悪化している。すでに肺は侵され、身体のあちこちもボロボロだ。
「この薬でできるのは、ただ命を永らえさせるだけだ。」
裏に意味を込められていることに気づく。つまり、苦しみを長引かせるだけだ、と。すでに沖田の苦しみ様は尋常では無い。今は平然としているように見えるが、いざ発作が出ると、看病をしている神楽が泣きそうなほど沖田は顔をゆがめて堰を連発するのだ。
「そうまでして生きたいのか?」
問われた。だが、沖田の答えは決まっていた。
「生きたいです。少しでも長く。コイツと……神楽と共に…………」
「……7年………ヨ」
女性は呟いた。誰に対してかはわからない。銀時はただ何も言わず口を閉ざす。
「薬のおかげで総悟は7年も一緒にいてくれた。いろいろなものを与えてくれた。一緒にいることの楽しさ、嬉しさ、心地よさ………」
そして
女性は足元にしがみつく、茶色の髪の少年を抱き上げる。
「この子を授けてくれた」
そう言うと同時に女性は振り向く。抱きかかえている少年の風貌は、何度も銀時に減らず口を叩いてきたあの青年にそっくりだ。ただ違うのは、目の色が女性のそれと同じであること。
「アタシは幸せだよ、銀ちゃん」
「そうか………」
「総悟はいないけど…けど、総悟はアタシの心の中にいる。それに、この子の中にもいる。」
ね~と声をかけると少年は笑顔で喜ぶ。無邪気な笑顔、それはあの青年のものと同じだ。この子が父親である青年のことを覚えているかは定かではない。だが、確かに青年はこの子供が生まれた時は喜んでいた。今までに銀時が見たことも無いほど喜んでいた。
幸せなのだ、彼女も、そして、少年も。
少年が地面へと下ろされる。彼が立ち上がるのを見計らい、銀時は口を開いた。
「…………帰ろうぜ。近藤夫妻が豪勢な料理用意してくれてんだとよ。」
「ゴリラと姉御が?」
「なんたって義弟の局長就任祝いだからな。アイツも忙しくなるぜ~」
「大丈夫ヨ。マヨラーも、それに銀ちゃんもいるからネ」
「あぁ、そうだな」
銀時がそう答えると、彼の着ている金色の縁の入った服がたなびく。それは隊長格である証、一番隊隊長である証だ。
「さぁ、帰るアル」
「そうだな、神楽」
神楽は歩き出した。そして、それを見た少年も母親について行くように歩き出す。
「?」
少年はふと、振り返った。そこには誰もいない。だが、何かを感じた気がした。
神楽を
よろしく頼むぜィ、息子よ
少年は、そこに誰かを見た気がした
優しくて暖かい笑顔の、誰かを
「何してるアルか、総司?」
「あ、うん!」
総司と呼ばれた少年は、前を見て走り出した。
泣きじゃくる神楽を相手に
沖田は全てを話した
ガラッ…
開いた襖に、部屋にいた面々は顔を上げる。ここは真選組の隊舎内の沖田の部屋。銀時、土方、そして神楽がそこで待機し、沖田を待っていた。
「総悟……」
神楽は立ち上がり、部屋に戻ってきた沖田に抱きついた。優しくその頭を撫で、沖田は部屋の中で座っている2人に視線を移した。
「近藤さんに、全て伝えてきましたぜぃ」
「そうか…」
土方は携帯灰皿にタバコを押し付ける。そしてパチンという音と共に灰皿のフタを閉めた。襖を閉め、沖田もまた座りだす。その横に神楽が座るのは誰もがわかっていたことだった。
沖田は一旦神楽に視線を移す。自分を見つめている視線を感じたからだろう。目を合わせ、優しく微笑んだ。
近藤に伝えたことを沖田は語った。今まで病気であることを隠していたことを謝罪し、頭を下げたらしい。その直後、近藤は沖田の頭を殴った。殴られても当然のことをしていたのだ、沖田は抵抗はしなかった。だが、近藤はその後、泣きながら沖田を抱きしめた。辛かっただろう…と。1人で抱え込んでいたことに、それに気づかなかったことに、近藤は涙を流しながら抱きしめた。沖田もまた、涙を流した。こんなにも心配してくれる者がそばにいた。だからこそ話さず、そして今日話す決心がついたのだ。
「オレはここに…真選組にいていいって…」
抱きしめられ、そして沖田も泣き出す。すると、近藤の部屋の四方の襖が音を立てて開いた。開けたのは他でもない、真選組の隊士達だった。全員聞いていたのかと思いきや、実は全員、以前より知っていたのだ。山崎が言ったというわけではない。山崎と土方が隠していることを知っていた、だから皆、知っても何もいわずに知らないふりをしていた。
近藤だけではない。皆もまた心配し、そして泣いてくれていた。
「オレ……ここに………いても、いいんですね…」
「総悟…」
「ここに………真選組にっ………」
頬を伝わる涙は袖で拭っても拭いきれないほど。それだけの想いが、ここにいたいという想いが、沖田の中にはあったのだ。幼き頃よりずっと一緒にいた者達と、最期まで共にいたいという想いが…
「これからどうするんだ?」
ひとしきり涙を流し落ち着いた頃、銀時は口を開いた。これから、そのこれからが一体いつまであるのかはわからない。結核とはそういうものなのだ。徐々に体力を奪っていき、いつしか起き上がることもままならないほど衰弱してしまう。
「どうするも何も…決まってますぜぃ」
神楽を見、そして目線を合わせた2人はうなづく。
「オレは、最期までここにいて、そして…コイツと共にいます。」
「…言っちゃ悪いが、先がいつまであるかわからねぇんだぞ?」
「わかってますぜぃ。だからこそ、最期の最期まで一緒にいて、いろんな思い出を作りたいんでさァ。」
後悔しないために
神楽を寂しがらせないために
沖田は以前、土方に追求したことがあった
姉ミツバが好意を向けていることを知りながら、何故その想いに応えず、突き放したのか?
と
理由はわかっていた。いつ死ぬかわからない身でミツバと結ばれるよりは、本当に幸せにしてくれる者と結婚し、子供を生み、そして幸せになって欲しい。誰よりもミツバを想っているからこそ、そう選んだのだということを。
わかっていた
わかっていた
だからこそ土方が憎かった。
だが、実際、沖田も同じ選択をしていた。神楽を本当に大事に想うからこそ突き放し、そして死に行く自分など忘れて誰か他の者と幸せになって欲しい、と。
しかしそれは、ただの1人よがりだったのだ。神楽の本当の幸せを沖田はわかっていなかった。全てを話し、全ての想いを告げた。そして2人は選んだ。共に、2人で生きるということを。
「今までオレ達ゃ、ケンカしかしてこなかった。」
「それも楽しかったアルけどな」
「まぁな。けど、どっかに遊びに行ったりの思い出、欲しいだろ?」
「うん!!」
そう
悔いを残さないために
「いっぱいいっぱい、思い出作ろうぜぃ」
「いっぱいいっぱい、思い出作ろうアル」
「行っちまったな…」
「行かせた、の間違いだろ」
空を見上げながら腕を伸ばしている銀時は、突然後ろからかかった声にゆっくりと振り向いた。そして、そこにいる男の顔を見て微笑する。その男はいつもの真選組の隊長服では無く、私服であろう黒い着物を着ていた。持っているのはやはりタバコ。吸い終わったそれを地面へと落とし、草履を履いた足で火を消すためににじり踏む。
「………知ってたのか?」
男、土方は目線を逸らして言う。銀時はただ顔をそらし、目を閉じた。返事は言っていないが、土方にはそれで伝わったようだ。
知っていた、という返事が。銀時の職業は万事屋。職業柄、地元の情報は裏のものからどうでもいいものまでいろいろと聞いて知っている。その中に真選組の沖田に関する情報があった時は驚いた。誰に頼まれたわけでもなく、銀時はその詳細を調べ上げたのだ。
真選隊一番隊隊長の沖田が結核である、と。
だが、銀時はそれを誰にも言わなかった。新八はすぐに顔に出るし、心配性である。新八の姉にだってすぐに伝わるだろう。彼女が回りに言いふらさないだろうということはわかってはいたが、近藤には伝えるだろうとは予想できた。沖田の上司である近藤に伝われば、最悪真選組を出て行かなければならないことも考えられる。あの近藤の性格でそんなことするとは思わなかったが…万が一もある。そうすれば誰が悲しむか?もちろん悲しむ者はたくさんいる。真選組の者達だけではない。銀時も、新八も、そして…神楽も。
「大串くん、タバコちょうだい」
「大串じゃねぇ……つーか、てめぇタバコ吸えんのか?」
「まぁね。」
これでも若い頃はいろいろしてもんよ?
そうつけ加えると、軽くため息を吐きながら土方はタバコの箱を銀時へと投げつけた。それをあまくキヤッチし、中から1本取り出す。ついでにとマヨ型ライターも借り、火をつけた。
白い煙が空へと昇っていく。そんな中、2人は何かを言うも無しにだタバコの煙を噴出す。
世の中には自ら死を望む者が多くいる。自殺者は年々増加傾向にあるし、これを止めることは難しいだろう。だが、何故自ら死を選ぶのだろうか?生きたいとは思わないのだろうか?
こんなにも生きたがっている者だっているのに
今の地球の医学では残念ながら結核は治せない。ましてや血を吐く頃ともなれば、症状は大分進行している。誰が何と言おうと、沖田に待ち受けているのは『死』だ。本人が望む望まないに関わらず、早くても1年以内には沖田総悟という存在は消えてしまう。
「どうにか…ならないのかねぇ…」
ふと、呟く。
「できるモンなら……やってるさ」
真選組の隊の者で、沖田の結核を知っているのはたった2人だけ。監察の山崎、そして副長の土方だ。沖田は病状をなんとか隠してはいたが、監察として些細な物事を見抜く力を持っている山崎が気づくのにそう時間はかからなかった。誰にも言うなと山崎は脅されていたが、土方には伝えるべきだと思い、伝えたのだ。前々から何かあるとは思っていたが、まさか結核だとは思わなかった。
近藤には言わなかった。否、言えなかった。土方は彼の性格を知っていたからだ。そしてそれだけではない。沖田が土方と山崎に頼んだのだ。あの沖田が、しかも頭を下げて。聞かないわけにはいかなかった。そのため、2人は周りには気づかれぬよう影ながら沖田を助けていた。
「アイツは…本当は生きてぇんだ」
土方に言われなくても、銀時にはわかっていた。彼が誰と生きたいかということも。その相手もまた、沖田と生きたいと思っていることを。
だからこそ悔しかった。
お互いがお互いを想っているのに。
「どうにも………できねぇのかよ………」
銀時の呟きは、タバコの煙同様、消えていくしかできなかった。
アイツに言って、別れて…屯所へと戻る途中だった
旦那が声をかけてきたのは
「ウチの神楽、泣いてたぞ」
やっぱり泣かせちまったのか。多分、いや、絶対…そうなるとはわかっていたでさァ
もしオレがアイツの立場だったとしても、泣いてただろうから
けどな…あぁ言うしか、方法は無かった
もうこれ以外に方法は無いんでさァ
なぜなら
オレに残された時間はそう長くないから
最初に血を吐いて、医者に見てもらって、申告されてからもう何ヶ月も経ってる
そろそろ…ヤバいんでさァ
隊の中じゃ土方と山崎くらいしか知らねェ
それ以外にはバレないよう過ごして来た
けれどそれもそろそろ限界
今日、帰ったら、オレは近藤さんに全てを伝えるつもりだ
そして
真選組から出て行く
出て行くその前に、アイツに会いたかった
出会ってから何度も衝突しては口ゲンカ、互いの武器で戦い合ったことだって数え切れねェ
背を合わせて戦ったことだってあったなァ
アイツだけ……いや、やっぱりアイツだけなんだよなァ
オレがそばに居て欲しいと思ったヤツは
だからこそ
幸せになってほしかった
オレと一緒にいたら、それは手に入らない
だからオレは言った
だから…言ったんだ
「てめぇが」
黙っていたかと思ってたら、いきなり旦那が口を開く
「てめぇが何考えてんのかはオレは知らねぇ………わざわざヒト様の事情に関わったりなんかしねぇからな」
「けどな」
「他人の幸せをてめぇが勝手に決めるなこのヤロー」
幸せ…
「神楽はなんつった?てめぇといて不幸だとでも言ったか?違うだろ」
「アイツはアイツで、アイツの幸せを求めてんだ」
「そこにてめぇがいないなんてのはアイツは考えちゃいねぇんだよ」
オレだって…できるならアイツと幸せになりてぇ
けど、できねぇんでさァ…
今の医学じゃこの病気は治らない
オレには死ぬしか…ねぇ
「人間な、いつ何が起こるかわからねぇんだ。だからオレ達は今この時を大事に生きるしかねぇ」
「後悔なんざしねぇように生きるのが本当の侍の生き方じゃねぇのか?」
気づいたら、オレは走り出していた
さっき歩いてきた道を逆方向へ走る
そして見かけた姿に、叫んでいた
「神楽!!」
アイツの名を
まだ、マフィアという組織が強大であった頃。
『彼』は、常に孤独というものに縛られていた。
生まれて数年、マフィアの抗争に巻き込まれ、両親を失った。
拾われた先の孤児院は、強制的に反マフィア組織のアジトに利用され、やがて無数の命と共に焼失した。
孤独に生きたスラムで、『彼』はいつもマフィアの影に怯えて生きていた。
多くのファミリーが生まれ、そして散っていく。
その度に失われる、マフィアにおよそ関係のない人々。
『彼』は、いつしか誰もいないスラムで時を過ごすようになっていた。
一人で、生き続けていた。
『彼』と共に最後まで生き延びた一人の人が、『彼』にこう言った。
「お前は、なんて幸運なんだろうな。溢れかえる死の中で、一人生き続けている。」
そうして、その人も散ってしまったけれど。
『幸運』
果たして、そうだろうか。
親を、友を、仲間を。
失う瞬間を誰よりも多く経験した『彼』が。
「死んだほうが良かった」と、何度思ったことか。
もう枯れ果てた涙に、感情に。
『幸運』などという言葉が存在するのだろうか。
「マフィアが、憎い。」
誰もいないスラムで、たった一言そう呟いた『彼』は。
数年後、小さなファミリーを創立することになる。
その名は、『ボンゴレファミリー』―――
孤独という殻の中で、『彼』の瞳は静かに燃えていた。
『死』に最も近い者の証―――『死ぬ気の炎』を宿して。
………何?
今
何て、言ったの?
「もう……オレ達やめにしましょうぜぃ」
わからないヨ
わからないヨ!!!
「元々…………オレ達は知り合うべきじゃなかったんでさァ」
お前、本気で言ってるの?
それ……本気で…
知り合うべきじゃなかった?
そんなことない
アタシはお前がいてくれたからここにいる
たった1人、全然知らないこの星に来て、ヤクザたちの元にいて、銀ちゃんと知り合って
そしてお前と出会った
たくさんの人と出会ったヨ
けどアタシだって、寂しく思うときがある
マミーは死んだ
パピーはいるけど会ったのはずっっっと前
お兄ちゃんは………いるけど、いない
寂しいヨ寂しいヨ
そんなときにそばにいてくれたのは誰?
銀ちゃん? チガウ
新八? チガウ
姉御? チガウ
ゴリラでもマヨラーでもマダオでもない
そばにいてくれたのはお前なんだよ
お前がいたから、アタシはいるんだよ
なのに
なんでそんなこというの
なんでそんなとアタシにいうの
「………じゃあな………」
おねがい いわないで
いわないで
いかないで いかないで
「神楽」
手を伸ばしても届かない
小さくなっていく背と声
おねがい そばにいて いかないで
「…そうごぉ……っ……」
いかないで
どうも、永倉です。
秋の象徴とも言える色取り取りの紅葉の葉が屯所の中庭に舞っています
そのまま置いておくのも風情があると思うけど、やっぱりこのままだと緊急の時に大変だろうから、オレは今ホウキで掃除をしてます
少し肌寒くなってきた日差しの中で、聞こえるのは葉が舞う音だけ
今日も真選組の屯所は静かで…
「永倉ぁ~~~!!!」
…………静かではないようです
「永倉!!」
「はいはい、今行きます!!」
声を上げてるのはこの真選組の一番隊の隊長の沖田さん
真選組の紅一点だけどものすごく強くて…オレ、憧れてるんだよな
並じゃない猛者達に怯えもせず立ち向かいオレ達に背を預ける姿は
なんかこう…一言じゃ言い表せないほどカッコいい
局長、副長の土方さん、そして沖田さん
この3人が揃えば、どんな相手にだって勝てるんだろなぁ
「永倉ァっ!!」
「だから行きますって!!」
全くもう…
何があったかは知らないけど、少しくらい待つってこと考えてほしいな
「永倉新八、参りました」
襖を開けて頭を下げる
「遅い!!」
途端に何かが頭に当たった
沖田さんが投げたんだろうけど………
コレは………
「…………煎餅?」
しかも海苔つき
いや、海苔つきはどうでもいいんだけど
「永倉ぁ」
顔を上げる
「そこのリモコン取って」
寝そべってる沖田さんが指差すのは…
テレビのリモコン
あ、結野アナのお天気情報が流れて
「って、リモコンですかぁ!?」
「早く取れ。じゃないと『渡る世間は鬼嫁ばかり』が始まっちまうだろが」
ちなみに、沖田さんからそのリモコンまでの距離
わずか2メートル
「リモコンくらい自分で取ってくださいよ!!!」
「ケチケチ言うな。新八のくせに。ぱっつぁんのくせに。」
「大体今って仕事中のはずですよ。沖田さん、今日オフじゃないでしょ!!」
「だからちゃんと仕事してるだろぃ?『渡鬼嫁』の鑑賞っつー大事な仕事をさ」
「それのどこが仕事ですかァァァァァっ!!!」
「ぐだぐだ言わずに…………
てめぇはアタシの言うこと聞いたらいいんだよ!!!!!」
田舎の父さん、母さん
オレ、江戸に出てきたの、間違いだったのかな…